1.会社設立をするメリット・デメリット
会社設立をするメリットとデメリットについて、個人事業として事業を開始する場合とで比較しながら明らかにしていこうかと思います。
個人事業として事業を開始する場合と会社設立して事業を開始する場合とで、設立までの手続き、設立後の効果の点で比較したものが下の対比表となります。
【個人事業と会社設立のメリット・デメリット早見表】
判断基準項目 |
個人事業 |
会社設立 |
コメント |
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設立手続 |
法務局 |
届出不要 |
届出必要 登録免許税等の支出を伴う |
設立手続は会社の方が煩雑あり、設立に係る時間と費用がかかる。事業開始の観点では個人事業の方が優位性がある。 |
税務署 |
届出必要 |
同左 |
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行政当局 |
許認可事業などは届出必要 |
同左 |
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信用力 |
会社に比べると低いとされる。 |
個人事業よりも高いことが多い。 |
従業員の確保や取引先の開拓において個人事業より優位性があることが多い。 |
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資金調達 |
個人の信用力を超えた資金調達には限界がある。 |
会社の信用力のほか出資額に応じた資金調達力となる。 |
資金調達力の点では、会社の方が優位性があることが多い。 |
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責任 |
個人事業主が無限責任を負う。 |
会社形態によるが、株式会社の場合は出資額を限度としての責任(有限責任)となる。 |
経営者の責任の観点では、会社の方が優位性がある。 |
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税金 |
所得税(事業所得) 消費税 住民税(都道府県、市区町村) 個人事業税、事業所税 |
法人税 消費税 法人住民税 法人事業税、事業所税 |
所得税は累進税率が適用されるため、高所得者の場合は会社税に比して多額となる。一方会社の場合、赤字であっても均等割が、資本金1億円以上の会社には外形標準課税が課税される。税金面では一長一短あるので一概にどちらに優位性があるかは判断できない。 |
上の表にありますように、それぞれ一長一短があります。
そのため、いずれの判断基準を重視するかにより、個人事業主として事業を開始するのか、会社設立して事業を開始するかをご判断ください。
なお当事務所では、事業開始に関わる無料相談を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
2.会社設立に必要な時間と費用
会社の中でも圧倒的多数を占める株式会社の設立について、どれだけの時間と費用が掛かるかについてご説明します。
会社を設立して事業を行う場合には、会社の設立登記をもって事業開始となります。株式会社を設立するときの手続の流れは以下のとおりです。
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会社の基本事項の決定
会社形態の選択、社名、本店所在地、事業目的、発起人、決算期など決定
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定款の作成
現行法では定款自治が原則なため、実態にあった定款作成が肝要!!
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公証役場での定款認証
認証費用は掛かりますが、電子認証だと印紙代が掛かりません!!
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出資金の払い込み
会社口座を払い込む場合は、口座開設が必要です。
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法務局への登記申請
会社設立登記申請書をもとに法務局に申請
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税務当局への届出
所轄税務署、都道府県税務事務所、市区町村役場への届出
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社会保険事務所への届出
社会保険料加入手続
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労働基準監督署への届出
労働保険料加入手続
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ハローワークへの届出
雇用保険料加入手続
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許認可の届出
営業に際して許認可が必要な場合に行政当局へ届出
設立手続は定款作成から始まります。定款では、商号、目的、本社所在地、資本金、決算日、発起人、役員等を決定することになります。
作成した定款は、公証役場にて公証人の認証を受けなければなりません。定款認証には認証料と印紙代が必要となります(電子認証の場合印紙代は不要)。
定款認証が終わりましたら、次に資本金の払い込みを行うことになります。現在の会社法では最低資本金の定めがないので資本金1円からでも会社を作ることができますが、設立後の設備資金や運転資金などを考えますと相応の資本金が必要となります。
資本金の払い込み後、法務局に提出する登記申請書を作成し、法務局に設立登記申請を行うことになります。この設立登記申請には登録免許税を支払うことになります。
会社設立の費用について
登録免許税は、株式会社の場合には資本金の0.7%(15最低15万円)となります。
なお設立登記申請までの期間が2週間ほど、申請後登記完了するまでの日数については、通常1週間程度ですが、申請が集中する月はさらに時間を要します。登記申請は時間に余裕をもって行うようにしてください。
会社設立の費用は、株式会社の場合、概ね以下のとおりです。
【株式会社の場合の会社設立にかかる費用】
項目 |
費用 |
コメント |
定款認証料 |
50,000円 |
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登録免許税 |
150,000円 |
資本金の0.7%(最低15万円) |
印紙代 |
40,000円 |
電子認証の場合は不要 |
代行手数料 |
50,000~100,000円 |
専門家に設立手続を依頼した場合の手数料 |
その他 |
20,000円 |
上記以外の費用としては、定款の謄本代、会社印鑑作成費用、印鑑証明料など |
合計 |
310,000~360,000円 |
当事務所でも設立手続の代行を行っております。ご関心のある場合お気軽にお問い合わせください。
3.設立する会社は、株式会社のほか合同会社(LLC)があるようですが、どのような違いがありますか
会社の形態としては、一般的な株式会社のほか持分会社と言われる合同会社、合名会社、合資会社があります。
また会社ではありませんが、起業形態として有限責任事業組合(LLP)もあります。以下では、株式会社との対比で、合同会社と有限責任事業組合について説明します。
判断項目 |
株式会社 |
合同会社(LLC) |
有限責任事業組合(LLP) |
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出資者の個性 |
一般に低い |
中程度 |
高い |
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信用力 |
相対的に高い |
認知度が低く不透明 |
同左 |
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設立手続 |
定款作成 |
必要 |
必要 |
不要 但し組合契約書の作成は必要 |
定款認証 |
必要 |
不要 |
不要 |
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出資払込み |
必要 (1円でも可) |
必要 (1円でも可) |
必要 (2人以上必要なため2円以上) |
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登録免許税 |
資本金の0.7%(最低15万円) |
資本金の0.7%(最低6万円) |
6万円 |
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責任 |
有限責任 |
有限責任 |
有限責任 |
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組織再編 |
会社間の再編は可能 |
会社間の再編は可能 |
会社への再編できない。 |
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役員、構成員の任期 |
原則2年(株式譲渡制限会社は10年まで可能) |
無期限 |
無制限 |
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決算公告 |
必要 |
不要 |
不要 |
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損益の帰属 |
原則として出資比率に応じて配分する。 |
会社への貢献度等を配分基準とできる(定款での定めが必要)。 |
損益の分配は各構成員の提供する労力や技術力等組合への貢献度に応じて行える。 |
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税金 |
法人税 |
法人税 株式会社と同じ |
所得税 組合自体には課税されず各構成員に所得税が直接課税される。 |
まとめ
有限責任事業組合(LLC)は、より個人事業に近い事業形態ですが、個人事業主の責任が無制限なことに対し、有限責任事業組合はその構成員の責任が有限責任となっています。但し株式会社と比較して極めて簡易ではあるものの設立手続が必要となります。
合同会社(LLP)は、株式会社と個人事業や有限責任事業組合の中間的な位置づけと言えます。
合同会社も有限責任事業組合も設立の簡易性、事業運営上の柔軟性などのメリットはありますが、未だ認知度が低く信用力も相対的に低い状況であることから、判断に迷われる場合は、株式会社形態を採ることが無難ではないでしょうか。