IT等システム化が進んでいない、紙ベースでのデータ処理が大半を占める中小企業が、マイナンバー制度に際して、具体的に何を行うべきなのかを解説していきたいと思います。

今回はマイナンバー(個人番号)を実際に扱う上での管理のあり方について概説いたします。

 

1.従業員からの誓約書入手

特定個人情報の取り扱いに関し、従業員への説明会を開催するなど周知徹底を図ることが必要です。その際、従業員からは誓約書、委任状の入手が望まれます。

 

誓約書(案)                                                                                                 

誓  約  書

 

株式会社○○  御中

 

 私は、個人情報保護法およびマイナンバー法等 (以下 「特定個人情報に関する法令等」という ) を遵守し、会社の指示に従うことを誓約いたします。今後も個人情報保護 (個人番号を含む) については、漏えいしないよう厳密に注意を払い、上司や会社の担当部署などへの報告や連絡、相談を密にいたします。

 また、特定個人情報に関する法令等に関連して、今後の改正や就業規則等の変更があった場合および会社から指示があった場合には、これに応じます。

 

                                                                                                                                                                                       平成27年  月  日

                                                                                                                  住所

                                                                                                                  氏名               ㊞

 

 

 


 

2.従業員からの個人番号の把握

従業員から個人番号を入手し、紙ベースでデータ管理を行う場合、下記の「個人番号報告書」を利用することが望まれます。

 

個人番号報告書(案)                                                                                     

個人番号の報告書

 

                                    殿

  当社では、マイナンバー法の実施により、貴殿および貴殿が扶養する家族等の個人番号を報告いただくことになりました。つきましては、平成    年   月   日までに、下記に記載され、○○○ (担当部署を記載) まで提出をお願いします。その他に、本人確認として免許証やパスポートなどを拝見させていただくことがありますので、ご協力をお願いします。

  なお、報告いただいた個人番号については、下記の使用目的に記載する事項のみに使用し、厳正に管理いたします。なお、   月  日までに個人番号の通知が送達されない場合には、上司または前記担当部署までお申し出ください。

使用目的 : 雇用保険・労災保険届出事務、健康保険・厚生年金届出事務、源泉徴収に関する作成・届出事務

 

 ——————————————————————————————————-

 

株式会社○○  御中

本報告書の趣旨を理解し、下記のとおり報告します。なお扶養家族等の追加など変更があった場合にはその旨を報告するなど、今後も会社の指示に従います。

                                                                                                                           記入日     年   月  日

1.部署                 

2.本人氏名         ㊞

3.個人番号          

総務課記入欄

・確認日時             

・確認者              

・確認書類             

 扶養家族等氏名              続柄        №       

         同                 続柄       №       

         同                 続柄       №       

         同                 続柄       №       

 

 

本人確認時に必要となるものとして、通知カードと個人番号カードとがあります。いずれで確認するかにより手続が異なってきます。なおガイドラインでは、電話での本人確認は認められておりません。

 

通知カード

個人番号カード

(対面の場合)

・カードに加え運転免許証、パスポート等必要

 

(書面送付の場合)

・カードの写しに加え、運転免許証、パスポート等の写しが必要

 

電話での本人確認は不可

(対面の場合)

・カードのみで可

 

(書面送付の場合)

・カードの写しに加え、運転免許証、パスポート等の写しが必要

 

電話での本人確認は不可

 

 

3.取引先からの個人番号の把握

取引先の個人番号が必要となるのは,以下のような、支払調書を提出する取引先と取引を行う場合です。

 

(イ)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

・弁護士、税理士、社会保険労務士などの専門家に支払った報酬

・有識者等に講演を依頼して支払った講演料

・作家、クリエイタ-に執筆、デザイン、広告作成等を依頼して支払った原稿料等

 

(ロ)不動産の使用料等の支払調書

 

(ハ)不動産等の譲受けの対価、不動産等の売買又は貸付けの斡旋手数料の支払調書

取引先から個人番号を入手する際には、下記をご活用ください。

  

取引先からの個人番号確認書(案)                                                                                  

取引先様へのお願い

2015年 ○月 ○日

株式会社○○ 総務課

 謹啓

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素はひとかたならぬご厚情を賜り誠に有り難うございます。

さて、マイナンバー法の施行により、貴殿にご提出する支払調書に貴殿の個人番号を記載しなければならなくなりました。つきましては、お忙しい中、大変恐縮ではございますが、本紙に必要事項をご記入戴き、個人番号確認書類と本人確認書類(免許証やパスポート)の写しを同封の上、添付させて頂きました封書にて、平成  年  月  日までに弊社へご返送戴きたく宜しくお願い致します。

ご連絡戴いた個人番号に付きましては、目的外では使用せず、社外への不正な流出、漏洩、改ざんから保護するために必要な安全対策を講じ,適切かつ安全に管理致しますので、何卒ご理解ご協力をお願い致します。

敬白



1.   取引内容

対象年度      平成   年度

弊社記入欄

 

確認日時          

確認者           

確認書類           

取引内容      不動産賃貸取引

2. 氏   名                 ㊞

3. 個人番号              

4. ご記入日時  平成   年  月   日

※1 法人等の実情などにあわせて修正が必要です。

※2 取引内容については、上記のように、予め当方で記入することが望ましいと思われます。

※3 取引先へは当初の発送前に事前に担当者から告知して協力を求めた方が、円滑でタイムリーな入手が期待

できると思われます。

 

 

4.株主からの個人番号の把握

株主へ配当金を支払った場合、支払調書に個人番号を記載しなければなりません。

株主からの個人番号の入手に際しては、上記取引先への確認書を参考に作成の上、ご活用ください。

 

 

5.その他運用上の留意点

(1)個人番号の提供を求めたが、拒否された場合の対応

 個人番号を提供するも者には、個人番号を提供しなかったとしても罰則はありません。また会社も個人番号を収集できなくても罰則はありません。但しこのような場合、ガイドラインでは以下の対応を会社に求めています。

・個人番号を提供することの重要性を知らしめる。

・その上でもなお拒否する場合には、書類提出先である行政機関等の指示に従う。

 (2)保存方法と廃棄について

入手した個人番号については、外部に情報が漏洩しないよう、ガイドラインは、以下のような保管管理と定期的な廃棄の実施を会社に求めております。

①    組織的・人的安全管理措置

  ・個人番号を取り扱う担当者を定め、担当者以外が個人番号を扱うことがないようにする

  ・従業員に対し、個人番号が漏洩した場合のリスクを、従業員教育によって周知させる

 

②    物理的・技術的安全管理措置

 ・個人番号が記載された書類を社内で保管する場合には、鍵付きのキャビネットで保管する

  →上記キャビネットは、できる限り、第三者が自由に出入りできる場所に設置させない

    また鍵は,取り扱い責任者が責任を持って保管する

  ・個人番号を含むデータをパソコン内で保管する場合には、ウィルス対策、パスワード管理のほか定期的なバッ

クアップを徹底させる

  ・書類やデータの法定保存期間が経過したものについては、速やかに廃棄又は削除しなければならない

 

(例) 保存期間と廃棄

種別

関係書類

書類例

保存期間

税務

源泉徴収関係

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、配偶者特別控除申告書、保険料控除申告書等

7年

雇用

雇用保険被保険者資格関係

雇用保険被保険者資格取得等確認書、同転勤届受理通知書、同資格喪失確認通知書、離職証明書の事業主控等

4年

その他雇用保険関係

雇用保険被保険者関係届事務等代理人選任・解任届等

2年

徴収

労働保険徴収・給付関係

労働保険概算・確定保険料申告書、一括有期事業報告書等

3年

労災

徴収法を除く労災保険関係

療養補償給付たる療養の費用請求書、休業補償給付支給請求書等

健保

健康保険・厚生年金関係

被保険者資格取得確認、標準報酬決定通知書、標準報酬改定通知書等

2年

厚年

 

 以上、紙ベースで個人番号を管理する中小企業が、マイナンバー制度の中で何を行うべきか具体的に概説しました。具体的な運用に際してご質問等ございましたら、弊事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

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