経営革新とは
事業を経営しておられる方や、新規事業の着手を検討しておられる方にとって収益は最も重要な要素です。多くの経営者の方が如何に収益を伸ばすか試行錯誤しておられる事でしょう。
国は、国の定める中期事業計画(以下「経営革新計画」という)を作成し、経営革新の実現を目指している中小企業を積極的に応援しております。利用率は1%とも言われている「経営革新計画」、一体どのような制度なのか注目してみましょう。
■「経営革新計画」とは中小企業の新規事業公的サポート制度
「経営革新計画」とは、中小企業の新規事業を様々な支援策によってサポートする制度です。民間の取決めではなく、「中小企業新事業活動促進法」に基づく公的な制度です。ライバルがひしめくビジネス界において、企業は常に厳しい競争にさらされています。そのような中、安定した収益を上げる為に絶え間ない調整は欠かせません。
「経営革新計画」は、新事業活動を通し競争を勝ち抜こうとする企業を心強くサポートしてくれるのです。逆に言うと、現状に甘んじている企業は同制度の恩恵を受ける事は出来ません。後述のように現状を打破しようという試みが必要となってきます。
■「経営革新計画」によるメリットは主に4つ
「経営革新計画」が国によって承認されると様々な援助を受ける事が可能となります。具体的には大きく分けて下記の4つです。
① 保証・融資の優遇措置
事業に必要な資金を通常より優遇された条件で借りる事が可能となります。政府系金融機関、(株)日本政策金融公庫から低金利かつ長期間に渡って融資を受ける事が出来るのです。さらに信用保証の特例措置もあります。信用保証とは、中小企業が融資を受ける際に債務保証をしてもらう制度の事です。「経営革新計画」の承認を受けた企業は、通常の保証額と別枠で保証を受ける事や保証限度額を引き上げる事が可能となるのです。
② 補助金の交付
経費の一部について補助金を受ける事が出来ます。補助金は融資とは異なり、利息もなくそもそも返済する必要もありません。もちろん交付の前後に書類を作成し各種報告を行う必要があります。補助金は別途で申請する必要がありますが、「経営革新計画」の承認を得ていると有利に審査を進める事が出来るのです。
③ 投資の支援措置
ベンチャーファンドや中小企業投資育成株式会社からの投資を受ける事が出来ます。投資を受ける事で、自己資本比率を改善し長期安定資金を確保する事が出来ます。また安定した経営を行い、取引先を拡大しネットワークを広げて行く事も可能となります。そして株式公開に向けての全面的なサポートを受ける事も出来るのです。
④ 特許関係料金減免制度
「経営革新計画」により開発した新たな技術の特許申請費用が軽減される制度です。具体的には審査の請求料と第1~3年分の特許料が半額となります。「経営革新計画」計画開始後はもちろん、計画終了後2年以内の企業も対象となっています。
上記の4つに加えて、他にも様々なサポートがあります。海外展開時の資金調達支援措置、設備資金貸付制度の特例、高度化融資制度等、販路開拓支援、中小企業総合展等です。
■申請のポイントは「新事業活動」と2つの指標
「経営革新計画」は、まず新事業活動を計画している企業を対象としています。従って下記の4つの活動のいずれかが「経営革新計画」の申請対象となります。
① 新商品の開発または生産
② 新役務の開発または提供
③ 商品の新たな生産または販売の方式の導入
④ 役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
これらはいずれも中小企業新事業活動促進法第2条第5項に基づく項目で、役務とはサービスを指します。つまり新たな商品やサービスの販売、導入があれば良いという訳です。
そして「新たな」商品・サービスは決してオリジナルである必要はなく、申請企業が未導入であれば問題ありません。但し該当商品・サービスの普及状況によっては承認対象外とみなされる事もあります。
上述の新事業活動に加えて、申請企業は下記の指標の目標が一定以上であるべきです。
① 付加価値額または1人あたりの付加価値額の伸び率
3年計画9%以上、4年計画12%以上、5年計画15%以上
② 経常利益の伸び率
3年計画3%以上、4年計画4%以上、5年計画5%以上
これらの条件を満たしている場合に「経営革新計画」計画を作成し、都道府県知事や国に書類を提出します。無事承認を受けると上述の支援措置を利用する事が可能となるのです。
■まとめ
「経営革新計画」とは新事業活動を通し経営改善を目指す企業をサポートする公的制度です。申請が承認されると種々の優遇・免除・支援措置を受ける事が可能となります。
申請を行うには新事業活動を行い、2つの指標の目標が一定以上でなければなりません。同制度を活用した企業は、付加価値額、売上高、営業利益で未承認企業より1.5倍~4倍もの伸び率を記録しています。まさに利用しないと損と言っても過言では無いでしょう。
しかし同制度は行政手続きが必要なため申請は容易ではありません。中小企業診断士や顧問税理士の助けを得て申請を行うと良いでしょう。業績が伸び悩み困っている方や、保証・融資枠の増大を考慮中の方は是非「経営革新計画」の利用を検討なさって下さい。