今回は経営者の皆様の関心の高い、節税の全体像についてお話しいたします。

一般的に言われている「節税」は、次の3分類に区分できると思います。

 

1.節税の3つの類型

(1)課税の繰り延べ

一つ目は、今期の納税額は減少させるものの翌期以降その分の納税をしなくてはいけないものです。個人事業で右肩上がりの会社などは、かえって増税となるなどのリスクが存在します。節税チェックリストにある節税手段の多くが、この課税の繰り延べです。

 

(2)政策的な税額軽減

二つ目は、国の政策的な配慮や税率構造の違いなどにより実際に税金額が減少するもので、節税効果は将来にわたり永続し

ますが、時限的措置であるものが多く存在します。

 

(3)グレーゾーンを狙った節税

三つ目は、税法の解釈上、複数の方法論が考えられる場合など、税務上有利な策を講じることで税金額を減少させるものです。これは税務当局から法解釈が否認されるリスクに加え、仮に合法に節税できたとしても、その後の法律改正により効果が減殺されるリスクが存在します。

 

 節税の目的は、税務当局への納税を抑えることで、手元現金を増やすことにあります。とかく納税額の減免ということだけに目が向けられがちであり、節税目的という名目で事業に(将来の利益に)直結しない支出を行うケースが多く見られます。節税対策をする上では、上記納税額の減免だけでなく、事業との関連性を中核にバランスよく考えていかれることが肝要です。

 

 以下、法人税の節税手段のうち代表的なものを示します。

 

 

【法人税の節税チェックリスト】

1.減資により節税を図る

節税手段

摘要

減資を行い中小企業税制の恩恵を受ける

資本金1億円以下とした場合の税務上の特例

①軽減税率の適用

 ②交際費課税(年間800万円までは全額経費)

③30万円未満の少額減価償却資産が全額損金算入できる。

 ④特定同族会社の留保金課税の不適用

 ⑤欠損金の繰戻還付の適用

 ⑥各種特別償却、特別控除

 ⑦法人事業税の外形標準課税が対象外

 ⑧法人住民税の均等割が少なくなる。

 ⑨原則国税局管轄から外れる

 

2.資産の処分により節税を図る

資産項目

節税手段

摘要

売掛金

不良債権の処分

不良債権を貸倒処理(貸倒損失の計上)、債権回収会社への売却(債権売却損の計上)など

貸倒引当金の計上

無税の貸倒引当金を計上する

棚卸資産

滞留在庫の処分

滞留在庫を売却や廃棄により費用化する

低価法の採用

評価基準を低価法に変更し、無税の評価損を計上する

有価証券・

会員権等

含み損を有する非上場株式や会員権等の処分

含み損を有する非上場株式や会員権等を売却や清算、放棄することで売却損や整理損、債権放棄損を計上する

強制評価減の計上

時価や実質価額が著しく下落している場合、強制評価減を実施して評価損を計上する

有形固定資産

少額減価償却資産の即時償却

30万未満の少額減価償却資産を一括経費処理とする

一括償却資産の損金算入制度の活用

20万円未満の一括償却資産を早期償却(3年)する

中古固定資産の活用

法定耐用年数の短い中古固定資産の活用により早期償却を行う

工事項目の精査

工事項目の精査により修繕費、付帯費用等の費用項目を洗い出す

土地付き建物の購入時の留意

土地付き建物の購入に際し、建物の価額割合を多くする

含み損を有する不動産の処分

不動産の売却ないし権利放棄することで含み損を売却損や処分損を計上する

 

3.損益項目の見直しにより節税を図る

資産項目

節税手段

摘要

役員報酬

役員報酬の配分

家族や親族へ役員報酬を配分することで、個人で支払う所得税・住民税を減額する

役員賞与の損金計上

事前確定届出給与制度を活用して、通常損金とならない役員賞与を損金計上する

役員社宅の活用

会社で役員社宅を取得又は借り上げしこれを役員へ一定家賃で賃貸する(概ね相場家賃の10~20%ほどで済む)

賞与

決算賞与の計上

従業員へ決算賞与支給する

退職金

保険

小規模企業共済、中小企業退職金共済の活用

将来発生する可能性のある費用を小規模企業共済や中小企業退職金共済の掛け金として前倒計上する

損金性のある保険加入

将来発生する可能性のある費用を保険料として前倒計上する

給与

福利厚生費

福利厚生費の活用

福利厚生費を活用(社員旅行の実施、スポーツクラブ等への加入等)する

従業員社宅の活用

役員社宅と同様(概ね相場家賃の5~10%ほどで済む)

社外研修費

社外研修の励行する(過去には教育訓練費の税額控除制度あり)

旅費交通費

出張日当制度の活用

旅費規程や出張規程を作成し、出張日当を旅費交通費として計上する

交際費

5千円基準の活用

1人当たり5000円以下の飲食費を損金算入する

・慶弔見舞金の損金化

慶弔見舞金規程を作成し、慶弔見舞金の損金化を図る

 

4.その他

 新会社設立による節税、赤字子会社の合併など組織再編による節税などがあります。

 

 

 

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